昔、作成した債務整理の原稿です。このサイトは原稿の保管用のサイトです。


 P5 争点と判例



 みなし弁済

■ みなし弁済
 みなし弁済とは、利息制限法の上限金利を超える利息の支払いであっても、それが法律上の手続にのっとったものであれば、有効な利息の支払になる制度です。本来、利息制限法の上限金利を超える利息は無効ですが、みなし弁済が成立する場合には、それが有効になるため、過払い金は発生しないことになります。そのため、貸金業者に対して過払い金返還請求の訴えを起こした場合には、貸金業者はみなし弁済の成立を主張してきます。
 しかし、みなし弁済が成立するためには、貸金業者は旧貸金業法17条・18条の要件を満たす書面を借主に交付する必要があります。具体的には、貸金業者は貸付の際に借主に対して契約内容を明らかにする書面を交付しなければなりません(17条書面)。さらに、貸金業者は債務の弁済を受けた際には、その度に借主に対して弁済金額や受領日等を記載した書面を交付しなければなりません(18条書面)。
 さらに、みなし弁済が成立するためには、借主が利息制限法の上限金利を超える利息を任意に支払う必要があります。そもそも、誰も任意で違法に高い利息など払いたくはありません。そのため、最高裁18年1月13日判決においては、期限の利益喪失特約が付いた金銭消費貸借の場合には任意性を否定しました。具体的には、そもそも「任意」とは、人に強制されずに自由に意思形成できることをいいます。そのため、事実上にしても何らかの強制下において利息制限法の上限金利を超える利息を支払った場合には任意性は否定されます。そして、消費貸借契約に期限の利益喪失特約が付いている場合には、利息制限法の上限金利を超える利息であったとしても、とにかく毎月の弁済を怠れば直ちに(もしくは2回程度弁済を怠れば)期限の利益を喪失して残債務を全て支払わなければならなくなるため事実上支払が強制されていると言えます。そのため、消費貸借契約に期限の利益喪失特約が付いている場合には任意性は否定されます。そして、貸金業者が作成した契約書のほとんどには期限の利益喪失特約が付いています。
 以上より、貸金業者がみなし弁済を主張したとしても、それが認められることはまず不可能です。
 なお、貸金業法の改正により、みなし弁済の規定は削除されました。

 悪意の受益者

■ 悪意の受益者
 悪意の受益者に対して不当利得返還請求する際には併せて利息も請求することができます。そのため、貸金業者が悪意の受益者の場合には過払い金返還請求をするに当たっては利息も併せて請求することができます。この場合の「悪意」とは、悪いと思っていたことではなく、「利得」が法律上の原因に基づかないものであることを知っていたことを言います。そして、過払い金返還請求における「悪意」とは、貸金業者がみなし弁済が成立しないことを知っていたことを言います。けだし、みなし弁済が成立しない限りは貸金業者は利息制限法が定める上限利率以上の利息を受け取ることができず、上限利率以上の利息を受け取った場合には、その部分が「利得」に当たるからです。
 さらに、平成19年7月13日最高裁判決においては、みなし弁済の成立が認められない場合には、みなし弁済の適用があるとの認識を有しており、かつ、そのような認識を有するに至ったことについてやむを得ないといえる特段の事情があるときでない限り、「悪意の受益者」であると推定されるとしています。そのため、貸金業者は悪意の受益者ではないと主張するためには、特段の事情を主張・立証してかかる推定を覆す必要があります。
 そのため、過払い金返還請求の裁判になると、貸金業者はみなし弁済の主張をしますが、みなし弁済の要件を満たすことは困難のため、容易にはみなし弁済の成立は認められません。すると、貸金業者は悪意の受益者と推定されます。そのため、貸金業者が自らを悪意の受益者でないと主張するためには推定を覆す必要があります。そして、推定を覆すためには、みなし弁済の適用があるとの認識を有しており、かつ、そのような認識を有するに至ったことについてやむを得ないといえる特段の事情を主張・立証する必要があります。もっとも、かかる特段の事情については主張したとしても立証することはみなし弁済の成立が認められないのと同様に非常に困難であり、容易に立証できるものではありません。
 ようするに、ほとんどの場合、貸金業者は悪意の受益者に当たると考えておいても問題はありません。そのため、貸金業者に対しては過払い金返還請求するに当たって利息も請求することができます。なお、利息は過払い金の発生時から請求することができます。

 途中完済がある場合

■ 途中完済がある場合
 貸金業者との間で借入を繰り返した後、いったんは完済したが、その後再度借入を行った場合には、前の取引と後の取引とを別々に計算するのが一番分かりやすく、さらに、貸金業者からもクレームをつけられにくい方法です。しかし、このような場合に、前の取引の際に過払い金が発生しており、さらに、前の取引が終了してから債権の消滅時効の期間である10年が経過していた場合には、前の取引と後の取引とを別々に計算すると、過払い金は時効消滅していることになるので、これを請求することができなくなります。
 まず、過払い金請求権の消滅時効の起算点は、平成21年1月22日最高裁判決によれば、取引が終了した時と判断しています。そのため、前の取引においていったん完済した際に取引が終了しているのであれば、過払い金の時効は完済時から進行することになります。もっとも、平成21年1月22日最高裁判決によれば、取引が終了した時とは、基本契約に基づく新たな借入金債務の発生が見込まれなくなった時点と判断しています。そのため、前の取引と後の取引の基本契約が同一の場合にはいったん完済しても取引は終了しないと考えることも可能です。なお、基本契約とは最初にお金を借りる際に貸金業者との間で結ぶ契約です。ほとんどは、極度額方式の消費貸借契約で、例えば限度が50万円なら50万円の範囲内で借りたり返したりを繰り返すことができる契約です。
 さらに、前の取引と後の取引の基本契約が同一であっても、前の取引においていったん完済した後に、その日のうちに再度借入を行い後の取引を開始していれば、まず取引は終了していないと考えられますが、その日のうちに再度借入を行ったのではなく、数か月や数年のブランクがある場合には取引が終了してるのかが問題となります。
 過払い金が時効消滅していれば一円も請求できない事態となるので、取引が終了しているか否かの判断は重要です。そのため、取引の終了時点が貸金業者との間で争いになった場合には、話し合いでは解決しないと考えた方がよく、まず裁判になると考えて間違いはありません。そして、裁判が嫌な場合には過払い金の請求は諦める覚悟が必要です。お金を返してもらうことは簡単なことではありません。

 一連計算の可否

■ 一連計算の可否
 一連計算を行うと、前の取引と後の取引の間のブランクの間も過払い金の利息が発生します。元本の額によりますが数年間ブランクがあったので数万円分の利息が発生していることも珍しいことではありません。また、前の取引の終了から10年が経過していても取引の終了時は後の取引の終了時となり過払い金債権が時効消滅しなくなります。そのため、貸金業者は一連計算については徹底的に争ってきます。なお、貸金業者との契約はほとんどの場合が極度額方式の消費貸借契約であり、限度額の範囲内で借りたり返したりを繰り返し行うことができるため、全額を返済したとしても契約は終了せずにさらに取引を行うことが可能です。そのため、全額の返済を挟んで前の取引と後の取引との一連性が問題となります。
 まず、基本契約が一つの場合、すなわち、前の取引と後の取引が最初にお金を借りる際に結んだ契約に基づくものである場合には取引の一連性は比較的認められやすくなります。
 しかし、基本契約が一つでない場合もあります。その場合には、実質的に契約が同一か否かが問題となります。前の取引と後の取引との間にブランクがなければ、貸金業者側の都合で契約を別にしたと考えやすいので、そのような場合には取引の一連性も認められやすいのですが、そうでなければ一連性は認められづらくなります。
 平成20年1月18日最高裁判決からは、基本契約が一つでない場合の実質的な同一性の判断基準として、@前の取引の取引期間の長さや後の取引までブランクの長さ、A前の取引の基本契約書の返還の有無、Bカードの失効手続の有無、Cブランク期間中の借主と貸金業者との接触の状況、D後の取引の基本契約が締結されるに至った事情、E前の取引と後の取引の契約内容の同異等が伺えます。しかし、これらを主張・立証することは容易ではありません。そのため、前の取引と後の取引との間にブランクがある場合には一連性を認めてもらうことは著しく困難になります。
 過払い金返還請求訴訟において証拠として使用するのは貸金業者が開示した取引履歴くらいですが、先に述べた@からEまでを立証するためには取引履歴のみで立証することはまず不可能です。そのため、@からEまでを立証するためには別の証拠を集める必要があります。しかし、そのためには手間や時間が著しくかかります。すると、とかく簡単に考えられがちな過払い金返還請求訴訟ですが難易度は著しく上がります。

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