昔、作成した債務整理の原稿です。このサイトは原稿の保管用のサイトです。


 P2 受任と開示請求



 引き直し計算

■ 引き直し計算
 まず、面談の際には以下の事項を事前に調べておいていただくとスムーズに進みます。@職業・収入、A債権者について(債権者名・借入時期・借入額・残額・保証人の有無等)、B借入をするに至った事情、C家族関係(家族の有無・職業・収入)、D財産関係(財産の有無・種類・価額)、E家計の状況(収入・支出の詳細)、F訴訟・督促の有無(貸金業者からどのように請求されているか)。
 なお、引き直し計算を行うにしても、貸金業者が取引履歴の一部しか開示しないような場合には、依頼者の記憶やATM明細書、引落の記載のある預金通帳等を頼りに計算しますので、借入に関する一切の書類については大切に保管し、見つからない場合にはよく探すことが重要です。また、10年、20年前に借入を行い全額返済したような場合には過払い金が発生している可能性が高いですが、昔すぎて何ら証拠が残っていない場合もあります。その場合に、貸金業者が取引は存在しなかったと言えば、それ以上請求することは困難になります。証拠がないのに取引はあったと言っても、貸金業者がなかったと言えば、結局は水掛け論になりかねないからです。
 ちなみに、クレジットカードの場合、キャッシングの場合は引き直し計算可能ですが、クレジットの場合は引き直し計算できません。けだし、立替払の契約には利息制限法が適用されないためです。
 もっとも、以下のように貸金業者には、貸金業法19条の2により、取引履歴の開示義務が課されています。
 「債務者等又は債務者等であった者その他内閣府令で定めるものは、貸金業者に対し、内閣府令で定めるところにより、前条の帳簿(利害関係がある部分に限る。)の閲覧または謄写を請求することができる。この場合において、貸金業者は、当該請求が当該請求を行った者の権利行使に関する調査を目的とするものでないことが明らかであるときを除き、当該請求を拒むことができない。」となっています。
 そして、取引履歴に基づき引き直し計算を行いますが、計算式は「元金×(1+利息制限法の利息×(日数÷365))−支払額=残元金(うるう年の場合は、「365」でなく「366」)です。ちなみに、法定利率は、元金10万円未満の場合は年20%、元金100万円未満の場合は年18%、元金100万円以下の場合は年15%です。特約で損害金の予定がある場合も、上限は法定利率の1.46倍までとなります。

 推定計算等

■ 推定計算等
 過払い金を請求するためには、まずは取引履歴をもとに引き直し計算を行う必要があります。そして、貸金業者には取引履歴を開示する義務があります。しかし、貸金業者が取引履歴を開示しない場合にはどのようにして引き直し計算を行えばよいのかが問題となります。このような場合には直接的な証拠がないため、間接的な証拠を積み上げていく必要があります。そのため、お金を借りた際や返済した際のATMの伝票等が残っていればそれに基づき計算する必要があります。さらに、伝票等が一切なく、このような場合にも泣き寝入りしたくなければ、いつ、いくら借りて、いつ、いくら返したか等をできる限り思いだして計算していく必要があります。そもそも、直接的な証拠があれば訴訟までにはなりにくいものであるため、このように間接的な証拠を積み上げていく方法が本来の訴訟です。むしろ、過払い金返還請求は貸金業者が支払を遅らせるための手段であったり、和解交渉を有利に進めるための手段の側面が強いと言えます。
 推定計算と似た計算方法として冒頭ゼロ計算があります。こちらは、貸金業者が取引履歴を一部しか開示しない場合に過払い金の金額を確定するために行う方法です。具体的には開示された取引履歴の貸付残高をゼロ円として計算していく方法です。この方法によると計算上は過払い金の額が増えることになります。そのため、冒頭ゼロ計算を行った場合には訴訟になることは避けられません。
 推定計算にしろ冒頭ゼロ計算にしろ、貸金業者にとっては不利なものであるため、和解交渉で貸金業者がこれらを承認するとは考えられません。そのため、訴訟になることは必須です。しかしながら、推定計算にしろ冒頭ゼロ計算にしろこのような特殊な計算をした原因は貸金業者側が全ての取引履歴を開示しないのが原因であるため非は貸金業者側にあります。そのため、訴訟においては貸金業者と徹底的に争う必要があります。
 なお、推定計算等を行ったとしてもあくまでも「推定」にすぎません。確実な計算を行うためにはやはり取引履歴が必要になります。そして、貸金業者に取引履歴を提出させる方法としては文章提出命令等があります。

 文章提出命令

■ 文章提出命令
 文書提出命令とは、一定の文書の所持者に対して文書提出義務を課することにより裁判所がその文書の提出を命ずる手続です。貸金業者が所持する取引履歴について文書提出命令の申立てを行うに当たっては、まずは、取引履歴を所持している貸金業者に対して法律上文書提出義務が課されているかが問題となります。貸金業者に対しては貸金業法19条の2により取引履歴の開示義務が課されています。そのため、貸金業者の取引履歴開示義務は、一定の文書の所持者に対する文書提出義務について規定した民事訴訟法220条2号で定められている「挙証者が文書の所持者に対しその引き渡しまたは閲覧を求めることができるとき」に当たります。そのため、貸金業者が所持する取引履歴は文書提出命令により提出させることができる文書に当たります。
 次に申立てに当たっては、文書提出命令の申立てを行うに当たっては、訴訟を提起した後でなければならないため、文書提出命令の申立てを行う前提として貸金業者に対して過払い金返還請求訴訟を提起している必要があります。なお、訴えの提起後に貸金業者に対して取引履歴を提出させるための手続としては文書提出命令の他に当事者照会があります。当事者照会は文書提出命令と異なり、裁判所を介さず直接相手方である貸金業者に対して取引履歴の開示を請求する手続です。しかし、当事者照会については相手方が回答しない場合についての罰則規定がないため実効性に乏しい側面もあります。また、そもそも貸金業者には取引履歴の開示義務が課されており、訴訟の前後を問わず、書面による開示請求か口頭による開示請求であるかを問わず取引履歴の開示を請求できるので(当事者照会の場合には相手方に対して書面で照会し、相手方は書面で回答する必要があります)、わざわざ当事者照会の手続を用いて取引履歴の開示を請求をする必要があるのかという点もあります。ちなみに、当事者照会は訴えの提起後に限られますが、訴えの提起前であっても予告書面により相手方に対して照会を求めることが可能です。
 文書提出命令が行われても相手方である貸金業者が取引履歴を開示しない場合には、真実擬制により原告が訴状に記載した過払い金額の返還が認められる場合もあります。

 特定調停の活用

■ 特定調停の活用
 まず、特定調停において、調停委員は文書提出命令を行うことができます。
 特定調停において、調停委員は貸金業者に対して取引履歴の開示を求めることができますが、貸金業者がこれに応じず、調停委員が特に必要があると認める場合には、調停委員は貸金業者に対して文書の提出を命じることができます。そして、貸金業者がこれに応じない場合には、裁判所は貸金業者に対して過料を課すことができます。なお、任意整理の場合も貸金業者には貸金業法19条の2において取引履歴の開示義務があります。もっとも、貸金業者が取引履歴を一応は開示するもののその内容が不十分だったような場合には、監督官庁に行政指導を求めるべきか、そして、求めたとしても一応の開示があるので指導を行ってくれるのか、分かりかねるところがありますので、特定調停における文書開示命令は借金問題を解決するための有効な手段の一つです。
 次に、特定調停においては、調停委員は17条決定を行うことができます。
 調停は、裁判所が関与するものの、当事者による話し合いによる解決を図ることがその目的のため、特定調停においては、実際に、当事者同士が裁判所で話し合い、互いに合意して紛争を解決する必要がありますが、裁判所は調停が成立する見込みがない場合において、相当であると認める場合には、調停に代わる決定を行うことができます。これにより、貸金業者が裁判所に出頭せず、実際に当事者同士が話し合わなくとも、裁判所は17条決定により紛争を解決することができます。特定調停における管轄裁判所は、原則として相手方の住所地等の簡易裁判所になります。もっとも、例外的に、債務者の最寄りの裁判所で特定調停を受理してもらい、その裁判所で特定調停を行うこともできます。この場合に貸金業者が出席せずに電話で合意が成立したような場合には、実際に当事者同士が話し合ったわけではないのて合意は成立しませんが、裁判所は17条決定により紛争を解決することができます。
 そして、17条決定がなされた場合に2週間以内に異議がない場合には決定は確定します。決定が確定すると裁判上の和解と同様の効力を有し、それは確定判決と同様の効力を有します。

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